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非常に面白く読めた。
水戸光圀公や保科正之公などとの対話シーンなどは春と同じように
身震いするような思いであった。

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やっと関さんと出会えたのは嬉しかったが
反面期待とは少し違ったのであれっと思ってしまった。
また、上巻冒頭についに繋がるのだが
割と淡々と事実が矢継ぎ早に書かれている印象で
冒頭を読んだ時に期待した盛り上がりはなかったように感じられる。

人と人の対話については流石の描写力で魅せてくれる。
題材も高校生の頃から好きだっただけあって面白い。
ただとしては、をアレンジしたというよりは
史実を羅列し間に創作を挟んでいる様な形なので、
消化不良のようなところはある。

参考文献に挙げられた文献の筆者の苦言も目にした。
作家はその道のプロでなくとも一人で取材や文献などから
ひとつの物語を書き起こす訳で、それだけで相当な労力だと思う。
参考文献から自分に都合の良い側面を事実として判断し
創作しても当然だとは思うのだが、文献の筆者の気持ちもわかる。

解説には筆者が若いから、というようなことも書いてあったが
に近い読みやすさと人物の魅力、題材の目新しさは良かったが
保科公が素晴らしいのはただの事実で
それを並べられれば読んでいる方もぐっとくるのは当たり前、
それがイコールこの小説の良さかと言ったらそうではないと思う。

ラストも尻すぼみというか淡々としていて、
もう少し自由に切り取って描いてくれても良かった気もした。

として、ひとつの物語としてはとても面白いのだが
天文学や碁、算術についての記述が、話の軸になるものなだけに
気にはなるところ。
決め台詞が誤謬なのはちょっといただけない。

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