銀の匙 Silver Spoon (8) ネタバレあり感想

銀の匙 Silver Spoon (8) (少年サンデーコミックス) コミックス – 2013/7/11
荒川 弘 (著)

チーズ作り。
消費者目線で言えばチーズはお高いですが
これだけ手間がかかっていると思えば
安いなぁとも思います。

来ない駒場君をみんなが心配しているのが優しいです。

あやめちゃんが学食に居る時、
ギャグシーンですが「食卓の上に足乗せんな罰当たりめ」
と八軒君がちゃんと突っ込んでいるところが好き。

遂に駒場牧場倒産のニュースをみんなが知ってしまいます。
なんとかしたいけれど、借金を肩代わり出来るわけでもなく
出来ることは本当に少ない。
駒場君をなんとか引き留めようとする八軒君。
でも駒場君の口から御影さんの家に保証人になってもらっているという事実を聞きます。
野球も跡継ぎもなんにもなくなった。
目標を見失った八軒君と同じ状態でもあります。

離農なんて珍しくもない、その駒場君の言葉は
確かに現実問題としてはそうです。
でも、しょうがないとは言いたくない。
アキちゃんに「巻き添え上等」と八軒君が叫ぶシーンは
胸に来るものがあります。
「わかろうとする努力はやめたくない」。

野球部の先生と先輩が
「ここやめた事、駒場に後悔させてやれ」
と言っているシーンも泣けます。

駒場牧場の牛が売られるところに立ち会う御影と八軒。
飼い犬のバースが吠えて、業者の人も
「オレらを牛泥棒だと思ってんだべ、いい番犬だ」
と返すところが、細かいところではありますが
切ない描写です。
人間を信用していて素直に車に乗っていく牛たちの姿も悲しい。
みんなで掃除をして、駒場牧場最後の牛乳を飲む。

やっぱり駒場君の現状に自分を重ね合わせていた八軒君。
アキちゃんはアキちゃんで、駒場君を見て思うところがあり。
周りに悪気はないのですが、だからこそきつい
当然跡取りになると思っているプレッシャー。
それが重くて本音が言い出せないアキちゃん。
「キツイだろうけど今を逃したらもう切り出せなくなるかも、
なにがあっても味方してやる」
この八軒君の言葉はすごく嬉しいです。
実際味方として何が出来るわけでもないとしても
その言葉だけで救ってくれることというのはあります。
お父さんがきちんと話を聞いてくれる姿勢なのも
本当に有り難い。
大人たちが一致団結して反対してねじ伏せられることなんて
いくらでもあるはずですから。

条件として大学進学が出され、
大蝦夷畜産大学が志望校として決まり、
八軒君が家庭教師を買って出ることに。

オレは農業しか知らんから学費を捻出してやるくらいしかしてやれない、
夢が叶うにしろかなわないにしろ、おまえの本気を
支えてくれる友達を裏切るようなマネだけはするな。
厳しいようでいて優しいお父さんの言葉です。

後でお母さんと二人になったとき、アキの本音を
実は知っていたと語るとき、本人の前ではバイト
としか言わないのに、お父さんがちゃんと八軒と
名前を呼んでいるところが好きです。
本音を言える友達が出来たんだね、というお母さんのコメントもじんわりします。