小説の神様 あなたを読む物語(上) (講談社タイガ) (日本語) 文庫 – 2018/8/22 相沢 沙呼 (著)
映画化すると聞いたので手にとって見たが
こちらはシリーズの続刊のようだ。
上巻を読んだ限りでは、九ノ里がやや良い印象だが
そこまで活躍を見せておらず
共感できるキャラクターがいない為、
淡々と読んでいる。
そんなにも『最近の高校』は未だに漫画を嫌い、
図書委員は漫画や雑誌、ラノベを読むことも許されないのだろうか。
漫画村をモデルにした件にしても、
こんなに最近の高校生はモラルがなく頭が悪いのか?
と疑問に感じた。
好む物語の話でも、同族嫌悪で失敗し成長する主人公を
好きにならないというのも同じく疑問だ。
本当にそんなものなのだろうか。
ただ、確かに
もう物語じゃ人の心は動かせなのかもしれない
というのは自分の時折感じなくもない。
そもそも文章を読めない人が多くなっており、
200文字もあれば『長文』と言い出す。
『世界の行間を読む』という真中の言い方は好きだった。
地の文で同じ言葉の繰り返しが多いのが気になった。
たとえば、『訥々と』。何度も同じように使われるし
話し手が同じなら口癖設定なのかなとも思うが
違う人に変わっても同様だった。
天月彼方の持論は中々興味深い。
・売れている作品は運がいいだけ
・読者は売れている本しか買わない
・運の悪い本は存在すら知られない
・読書好きじゃない普通の人たちは自分で本を探さない
・本気を出さないでうまく手を抜いて書くべき
・届かない相手にはいくら頑張っても届かない
・物語が人を動かすかどうかなんて、読者の力量次第だ。読み解く力がないやつには、何を言っても無駄だ
・真摯に書くのは売れてからでいい
小余綾などは反感を覚えているようだが
間違いとは言い切れない。
彼女が言うように実際天月が売れているから、というだけではなく。
漫画しか読まない人が増え、
読書をする人が少なくなり、
自分で好きな本を選んで行間もきちんと読める人ではなく
テレビで紹介され平台に積んである本だけ気まぐれに手に取るのが
『普通の人たち』。
そんなのは間違っている、と思いたくても
手にとってもらえないなら話が始まらない。
どんなに良い本でも気づかれなければ読まれないし、
読解力の無い人が読んでもつまらない、わけわからないで終わってしまう。
それなら、真剣に書くとしても流行に迎合した
漫画化や実写化しやすい軽くて頭が悪くてもわかる内容を
量産して名前を売ってからでもいい。
これは、そのとおりだ。
物語が本当に好きで、真摯に向き合って
向き合いすぎて書けなくなろうが、血反吐を吐きながらやっとの思いで書こうが
そんなの読者には関係無い。
多分、真摯に物語に向き合うことが正解だと
持っていきたいのではないかと想像するが
ここまで現代日本の読書力低下や
本が売れないという『真実』を書いた後で
どう正解まで持っていってくれるのか下巻を読むのが楽しみだ。