著者 : 有川浩
幻冬舎
発売日 : 2012-07-27
ドラマを先に見て、小説の方も気になったので読んでみました。
ドラマ版は脚本が信頼の野木亜紀子さんですし、
有川さんも撮影現場に出向かれておられましたし、
小説と異なる展開があっても無理がなく、ドラマらしく脚色されていて、
小説の良さを損なわない内容で、改めて素晴らしいドラマだったなと思いました。
兎に角キャスティングがどの方も素晴らしく、ドラマを見てからでも楽しめる小説だと思います。

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他の方のレビューを見ていて、ご本人や近しい人が自衛隊の方だ
というレビューを多く見かけ、
どの方も「リアルだ」と書かれているところが印象的です。
一般人から蔑まれがちという点もリアルなのだろうと思うと
一般人の一員である自分としては申し訳ない気持ちでいっぱいになります。

マスコミサイドで、かつ左巻きな恩師を持ち学校でもそう習ってきた世代なので
自衛隊に対して大した悪気もなくナチュラルにネガティブであるリカが
自衛隊担当になり広報室の面々と関わる内に自衛隊に対する知識共々人間的に成長していく姿が描かれています。

一方、悲運に見舞われたにも関わらず周囲が心配するほど泣くこともできなくなっていた空井も、
詐欺師鷺坂の采配で見事に爆発、リカに先んじて立て直し新しい道を見出します。
諦めたらもうそこから余生になってしまう、という台詞は、ドラマでも印象的でした。

私は空井というキャラクターがとても好きで、綾野さんにはまった役だったと思っています。
彼はとても優しく、そしてとても強い人です。
犬のように懐っこいところもあり、パイロットを志しただけあって空が好きで責任感も強く
男の人としてまた人として、とても魅力的な人です。
辛い中でも自分の気持ちを押さえ込み、きっかけを得て整理し、
新しい目標に向かって進み続ける姿に尊敬の念を覚えました。

”あの日の松島”は、当時の色々なことを思い出しながら読みました。そしてまた、これを丁寧にドラマで取り上げてくれたこと
とても良かったなと改めて思いました。
悲惨なところばかりを取り上げるマスコミ、
それでもネットの普及で真実の一端を知ることができたものの
ネットニュースの中ですら自衛隊のみなさんへの感謝はあっても
彼らも被災者だという点についての言及は少なかったように感じます。
それをドラマというメディアで、しかもメディアの一員であるリカの視点で描いたことは貴重なことだったと思いますし
この小説できちんと言及してくださったこと、日本人として嬉しく思います。

ラストはドラマ版の方がわかりやすくドラマチックでもありましたし
このまま続いていくという感じがしてハッピーな終わり方で好きでしたので
小説版のラストは少し寂しさが残りました。
無理に恋愛で終わらせないという点では良いのですが。

有川さんの小説は図書館戦争シリーズの後半などもそうですが
恋愛要素が激しいものは一昔前のラブコメのようで
苦手な人は苦手なのだと思います。
自分は恋愛振りの書き口も嫌いではない方なのですが
一点だけこの本の中でどうしても気になってしまったのが
頭ナデナデのシーン。
ドラマを見ていて「それはないだろう」と思ったのですが
小説でも頭ナデナデがあり、しかも空井が「なでてて」とおねだりまであったので
ここは自分の中ではどうしても納得のいかないところでした。
他に人がいないとは言え恋仲でもない女性の前で
図らずも泣いてしまうのまでは良いのです。
男の人相手に頭を触るのは自分の中では非礼にあたるという認識なのでまずここで驚き。
そこで冷静になるのではなく号泣はまだしも、おねだりはどうなのでしょうかと思ってしまいました。

慰めるなら腕に触る、背中を撫でる、思わずハグしてしまう方が自分の中では納得いったのですが。
ドラマ版でも見ていてこちらが恥ずかしくなってしまうシーンでした。
礼儀とか人の関わり方によって考え方や感じ方が異なるところだとは思うので
単に甘々なシーンと受け止められる人の方が多いようなので良いのですが。
小説では見て見ぬふりをしてくれる上司たちが、ドラマでは派手にいじってくるのも笑い話になっていて良かったです。

またドラマを見直したくなりました。

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