銀の匙 Silver Spoon 3 (少年サンデーコミックス) ペーパーバック – 2012/4/18
荒川 弘 (著)
家畜とペットの違いについて、愛情の有無かと悩む八軒君に、御影のおじいちゃんが
「愛情はあるけどおいしく育てよって注ぐ愛情」
と答えるのが
なるほどなぁと思いました。
自分には夢がないけど、夢がある人の夢がかなわないのが嫌
と言う八軒君。
お兄さんの慎吾さんが登場します。
いい大学に入れと言われたから東大に入った、
あとは好きなことをやる。嫌がらせで辞めたというお兄さん
彼は彼で弟とは違う形ながらも
お父さんとうまくいかず抑圧されていろんな影響を
受けているのだなと思いました。
二野ちゃんと三空ちゃんがトウキビを持ってくるところが
すごく可愛いです。
美味しいものが手に入ったらみんなで楽しく食べる習慣、
言ってしまえば娯楽がそれしかないからとも言えるのですが
すごく良い習慣だと思うのです。
なんでも鮮度は大事ですし。
味覚が良いというのを稲田先輩やおじいちゃんに言われて、
「君らが子供の頃から親がちゃんとしたもの
食べさせてくれてたんだべ」
という言葉もすごく大事。
ひいおばあちゃんが人間だからたまには失敗する、
命が関わっているときは失敗したらいかんと
給料を受け取れと言ってくれるのも
言葉少なだからこそ重いです。
「馬鹿は碌でもないものに金を遣う。
賢い奴は自分の成長のために遣う。
金の遣い方で男の価値はわかるものさ。」
というのも名言です。
一回失敗しただけで恫喝されるようなお父さんだったからこそ、
御影のお母さんが一回失敗した位で、と言ってくれるのが
新鮮だし優しいとも思いますよね。
与えられた作業をクリアするので精一杯で
まだ目標が見つけられない八軒君。
自分に合った馬に乗るのは楽だけど
馬の個性に合わせるのも面白い というのも
しんどそうだけど納得のいく言葉です。
生き物を食べるという行為について、
ベジタリアンというワードも出てきますが
肉が美味しい、というのがすごく正直な言葉です。
わかったフリしてスルーしないで真面目に受け止める八軒君と、
それに対して周りも真面目に返している。
稲田先輩の見立てどおり、そこがとても良いです。
価値観が凝り固まっている群れに異物が混ざることで
ディスカッションが起こる。
価値観の違う物が混ざれば群れは進化する。
富士先生もすごく好きな先生です。
実際、吉野も今まで当たり前過ぎて
深く考えたことがなかった、
きちんと捉え直すのも大事だと言っていて、
この子も凄く良い子なんですよね。
そして、八軒君のバイト代の使いみちが決まります。
安易に豚を飼う、ではなくて、肉になった豚を買う。
見送るとき業者の人に頭を下げる八軒君と、
それに大人たちが「うん、うん。」とちゃんと
応えてくれるのが良いです。
先生たちもみんな自由で熱意があって、
アミノ酸の話から次の授業の先生も入ってきて
みんなでわいわい議論が始まるところ、好きです。
そして屠畜場の映像を授業で見るときに、
強制ではないとしてくれるのも良いです。
それでも行く八軒君、相川君も偉いです。