アンチ整理術 (日本語) 単行本(ソフトカバー) – 2019/11/8
(著)

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アンチ整理術という挑戦的なタイトルではあるが
中身はビジネス書、というよりも寧ろ読み物に近いかもしれない。
森先生節炸裂で単純にエッセイとしても面白かった。

自分は断捨離ブームに懐疑的で、
ワクワクしないものは捨てろ、後悔しないと言うが
大体捨てた数日後に必要になって後悔するので
できるだけ捨てたくない。

絶対に不要だと断言できない、将来役に立つ可能性のあるもの。
断捨離なんてもってのほか、
不要なものを捨てるだけでいいという言葉に
すっきりした。

自分が稼いだ金と交換するのはその可能性があったからで
可能性の山、宝の山である。
勿体ないと思って溜め込むことが悪のように書かれた整理術本が多くて不愉快だったので
宝の山と言ってくれる人がいて嬉しい気持ちだ。

確かに片付けは本当に必要なのか。
不衛生なのはもちろん良くないし、秩序は社会維持のためでもあるが
家庭で整理整頓は親が子供にさせるもの、上から目線のニュアンスがある
というのも納得するところ。
部屋が片付いているというのは身だしなみと同種の問題というのは
そのとおりだと思った。

作業もやりかけが出てくる。
進捗した段階じゃないとどれがいらないとか判断できない。
片付けられるのは創造的な仕事をしていないから。
内心気になっていて、片付けないとなあという意識がある限界を超えたときに片付けを決断する。
この辺りもまるで自分のことかと思う言い草だった。

言い訳だと思う人には言い訳でしかないのだろうが
自分は正にこれだ。
集中力がないからやり散らかしてしまう。
PCもウィンドウをたくさん開きっぱなしにしている。
でもやり散らかしてたくさんのことをちょっとずつ片付けていかないと
なにも片付かないのだ。

何をすれば良いかわからない状態とは、なんでも良いからした方が良い状態である というのは確かに名言。
どんどんものは増える。新しいことを始めるから。
それだけ面白いこと、やりたいことが多いから。

何か押し付けるようなのではなくて、要は人によるという話で、
◯◯術と銘打ってもそういうやり方もあるよくらいの意味に取るのが良い
という書き方も好きだった。

何をどうすれば整理したことになるのか、した方がよいかも人や条件によって変わるのに
整理しなきゃ駄目って思い込んでしまう人がほとんどというのもそのとおりだろう。

お子さんにプラモデルの作りかたを指導したことを後悔したというのも
興味深いエピソード。
若者にアドバイスすることは、彼らの楽しみを半減させる可能性がある。
子供が夢中になっているものに水を差さない。
だが危険があってはいけない、というアドバイスだけをする。
適度な距離感も必要だ。やはり、指導は『上から目線』だから。

心が散らかっていないか頭の中を整理するのが重要。
整理・整頓は、本質を見極めること。

担当編集の方との会話も小気味よかった。
努力だろうが知力だろうが運だろうがなんだっていい、結果がでるかどうか。世の中は非情。
ピアニストが力が足りないと感じたとして、本やセミナーに参加しても駄目。
もうピアニストになっているから。
本やセミナー程度のことなら誰でも教えられる。
プロになってしまったらあとはピアノを弾くしか無い。
かといって、闇雲にやれば良いというのでもない。

情報過多というわりにみんな薄っぺらい情報しか見ていないし深く追求しない。情報と情報の関連性も考えない というのもかなり共感した。
意外とみんな、自分で考えないのだと最近度々認識する。

考えない情報は死んだデータ。変化しない。
考えることで始めて情報が生きる。生かせば自分のものになるし応用がきく。
本質を考える。考えるのはただだしいつでももとに戻せる。考えて決めるのではなく判断せずいずれの判断についても可能性を考える。
考えないし、考えて判断して、もう変えてはいけないと勘違いしているケースが実際多いように思う

やらなきゃいけないけどできないこと。森先生でもそんなのはしょっちゅうというのも
凡人として安心できるポイントかもしれない。
嫌だなと思いながらやるしかない。
得意なことと好きなことが一致していると働きすぎるから、
得意なものを嫌々やるのが理想というのが面白い。

人に訊く前に自分で考える。
大事なのは方法論ではなくどこへ向かって歩きたいか。
目的地も無く行き方を模索してもそれはどこへも辿り着けないに違いない。

反断捨離という言い草も面白かった。
収納というが隠しておくほど嫌なものは買わなければ良い。
買うのを我慢するよりバイトして欲しいものを買う。
収納できなくなったら広いところに引っ越す。
トータルで価値があるものを所有していればトータルで売れるのだから生きているうちに断捨離する必要などない。

みんな人の目を気にする。それが悪いといっているのではない。
僕にはその気持がないというだけである。
という言い方も素敵だと思う。

自己完結し自分のために生きる。
他者の評価はちょっと微笑ましい程度のオプションという考え方、良いなと思った。
自分の行為を一番よく見ているのは自分。

ラストの
片付ける暇がないのだからしかたがない。そう、すべては、しかたがないことなのである。
という終わり方も良かった。

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