悼む人〈下〉 (文春文庫)

どういったオチをつけてくれるかと読み進めてきたが
自分としてはあまり意外性の無い話の終わり方だった。
自分が死んでも誰かが自分のことを覚えていてくれる
というのは心が慰められることかもしれないが
そうした内容の小説は他にもある訳で
静人が異端なのは悼む旅をしているところにあったと思う。
三十路を過ぎて家族も顧みず自分の衣食住も削って
“自分探しの旅”をするというのはやはり異常なことであると思うし
悼むことを辞める必要はないと思うが
ボランティア活動的に自分の生活の横でするべきであるというのが
自分の考えだ。

登場人物の全員にいまいち感情移入ができず
静人が道連れに心を許したりエグノが良い人になっていたり
というのも個人的にはありがちで一番なってほしくない方向に話が
流れてしまったなという印象。
なんの感慨もない話ではけして無いと思うが
感動というような感情は特に沸かなかった。

読みにくい話ではないが優等生な印象で
語り手が変わる割にはみんな"いい人”に持っていかれるようで
偽善的な雰囲気を感じてしまった。