【読了】シャーロック・ホームズ対伊藤博文 (講談社文庫)

ホームズがもしも実在したら。そしてもし伊藤博文と会っていたら。
ifから始まる史実を絡めたフィクションはとても好きです。タイトルに惹かれて余分な知識を入れずに読んでみました。
ネット上のレビュー評価は高いようですが、個人的にはそこまで好きにはなれませんでした。
ホームズにも伊藤にも感情移入ができず、キャラクターに惹かれません。
もしこの作者がイギリス人であったら、またはライトノベルとして出版されていたら、素直に面白かったと思えた気がします。

松蔭先生の存在の書き込みがあっさりしており個人的にはがっかりで、先生の言葉など知っている人なら「あああれね」と思えることがさらっと書かれています。
これはホームズやその他歴史についても同じで、知っている人はにやりとできる箇所がいくつかあると思います。
ただ、歴史やホームズのマニアでなくともちょっと知っていればわかる程度で、
自分としては物足りなさを感じました。
自分の好きなホームズとはキャラが違うように感じ、生意気や無礼さが非常に目立ったのと、
推理というより超能力のような、推理に至るまでの理由が納得の行かないところもありました。

特に冒頭の第二次長州征伐の頃の長州藩の考え方についての記述が疑問です。
まるで長州藩は徹頭徹尾、本気で攘夷をするつもりだったかのようです。

日本女性が洋装でも背筋を伸ばしているのは、帯を潰さない為ではなく
帯に支えられているから背筋が伸びるからです。
洋服に慣れた現代日本人は姿勢が悪いですが、
当時であればみな姿勢は良かったでしょう。
ホームズが着物を着たことがないからこその推理ミスなのかもしれませんが。

伊藤を大事な人物と認識しているのに、必ず帰還すると断言してくれ、と約束をして共に危険な場所へ赴くのは、
本来感動するところなのだと思うのですが
自分には蛮勇に思えました。