進撃の巨人(25)  ネタバレあり感想

進撃の巨人(25) (講談社コミックス) コミックス – 2018/4/9
諫山 創 (著)

エレンが徹底して冷静な態度なのが、
成長と言いきって良いのかどうか。
心情がいまいち読みきれない。
手を怪我した状態の無言の脅しが恐ろしい。
もしかして何か対話で模索できるものがあるかと
微かに期待してしまったが、飽く迄も冷徹な兵士だった。
平和への反逆者その名はエレン・イェーガー。
凄い二つ名である。

今まで必死で駆除してきた巨人は人間で、
実は壁の外では自分たちこそが駆除すべき存在と思われているというこの世界。
本当に、「敵は世界」なのだ。
「一体何が出来たよ、子供だったお前がそのと環境を相手に」。
と言うエレンの台詞には憐憫を感じる。
自分が逆の立場でも同じことをするだろうと思っているのではないか。
ここでだから憎み合うのはやめよう、というお花畑展開には
けっしていかないのがこの『進撃の巨人』の良いところなのだと思う。
やはりこのライナーの姿を見て、憎みきることはできない。
かと言って、止まることもない。

対人だけでなく民間人を巻き込むことすら、最早躊躇しない。
タイバーの演説の最中巨人化してからの怒濤の展開には戦慄を覚える。

ここは敵国で、巨人の数も多い。いくら急襲でも有利とは言い難い。

2巻を経て登場した調査兵団には
それだけで胸が躍るが、作戦の一貫だったわけではなく
エレンの単独行動というのには驚きである。
自分の身柄を人質に調査兵団を動かしたということだ。

『不戦の契り』をして死ぬまで壁の中に閉じこもることは
本当に幸せと言えるのだろうか。
パラディが島国であることも相俟って、色々考えてしまう。
「家畜の安寧」よりも「地獄の自由」。

共通の敵を持たなければ人々は連帯できない。
しかしそれでは争いがなくなるわけではない。
どうあっても平和は訪れないのではないのだろうか。