ゴールデンカムイ 19 ネタバレあり感想

ゴールデンカムイ 19 (ヤングジャンプコミックス) コミックス – 2019/9/19
野田 サトル (著)

アムールトラがヒグマすら襲うとは恐ろしい。
とても人間に勝ち目があるとは思えないが
追い払うとはすごい行動力だ。

キロランケを叩くソフィア。
彼女はキロランケから何を聞き、知っているのだろう。

戦って守らないとすべて消えてしまう。
生まれてくる子どもたちは言葉も神様も忘れてしまうだろう。
このウイルクの焦燥感にはとても共感する。
人間が思っているより、文明を消すことは容易い。
それなのに焦燥感を抱く人間は少数だ。
しかし極東連邦国家という思想には驚いた。
思った以上に壮大だった。

間違った情けや優しさは弱さになるという言葉。
狼の無駄の無い機能的な美しさを
感じるというウイルク。
弱った狼の遠吠えは、
仲間に殺されたくて呼ぶのだろうか。

ウイルクとはポーランド語でオオカミという意味で、
それを聞いたアシリパのお母さんが
ウイルクにつけた名前は、オオカミに追いつくという意味。

名前の付け方や、ウイルクがインディアンは
部族同士で争ってしまったから白人に負けたと言っていたことで
『ダンス・ウィズ・ウルブズ』を思い出した。
自分たちの文明を守る戦いであることは同じである。

白石は一人で歩くなと言われたフラグを
見事回収してしまったが、杉元が助けてくれた。
「マジで不死身かよ」と白石が喜んでいるのが良い。
ここで杉元から白石に、
「尾形はキロランケと結託して俺を撃った」
という事実が伝わったのもひとつの安心材料だ。

誰にも言ってはいけないとウイルクに言われた
ウイルクのアイヌ語名。
思い出し事を尾形に気づかれてしまった。
尾形はアシリパに、杉元が撃たれた時
キロランケがどこかに合図していたと言う。
なんとか情報を聞き出そうと畳み掛ける尾形。
「俺は杉元に頼まれた」という言葉。
しかしアシリパが質問を重ね、
「そいつは杉元じゃない」と
踏みとどまることができた。

そんなアシリパに、尾形は
アシリパは清いままでいようとしていることに
違和感がある。
殺す道理があれば罪悪感に苦しまない。
道理をやろうか。お前の父親を殺したのは俺だ。
と告げる。
静かだが、恐ろしいシーンでもある。

杉元が助けに来てくれて、
しかも思わず馬手を離してしまみ矢が尾形に命中したのを
躊躇なく肉を刳り毒を吸い出し
一貫したアシリパを救う為の行動をする。
素晴らしい感動のシーンから
あまり余韻もなくギャグシーンに持っていくのも
ゴールデンカムイらしい。