舞台『刀剣乱舞』虚伝 燃ゆる本能寺 ~再演~ (円盤)ネタバレあり感想

舞台『刀剣乱舞』虚伝 燃ゆる本能寺 ~再演~(通常版) Blu-ray
鈴木拡樹 (出演), 荒牧慶彦 (出演), 末満健一 (監督)

 

映画と刀ミュは履修済みの状態で、なんとなく世界線が云々という話は耳にしつつも
決定的な情報はほぼ入れないまま鑑賞。

ミュージカルと比べると、「他の本丸に演練を申し込めばいい」という台詞があるなど
はっきり他の本丸の存在に言及するところが新鮮だった。
それと登場する男士が多い。2部隊同時出陣なども新鮮に感じた。
自分は舞台上で食べ物や飲み物を本当に飲む方がどきどきするので、ステは普通にフリだけなのも
ミュとは違うところ。こちらの方が安心はできる。(笑)

説明調と感じる台詞はやや多めには感じたが
台詞というか芝居の分量が3時間と兎に角多いし致し方ないだろう。
三日月宗近の髪飾りの位置も、今にして見れば可笑しいのではと思うが
続編で改善されているようだ。
個人的には、舞台と言えば音楽劇でもなければ歌わないのが基本
と思っているので、歌われると聞いていて少々照れる。
歌唱力も正直バラツキはあるとは思う。
着物の足捌きではないなと感じる方もいて少し気になった。

特筆すべきは殺陣ではなかろうか。
殺陣が非常に恰好良い。
正直刀ミュの殺陣付けは同じ殺陣が複数の男士につけられていてワンパターンでに感じる部分が結構あるが、
刀ステは男士により刀種により殺陣が違い見応えがあった。
後半で山姥切が一度刀を放ってから取る殺陣、実戦では刀を手放すなど原則ありえないことだが
殺陣としては見応えがあるし、荒牧さんよく取れるなと感心した。取り落とすことなどなかったのだろうか。

笑えるシーンもあり、長谷部と馬の掛け合いのところなど
面白かった。

駄目刀って言うな、と山姥切が怒るのが良い。
不動行光はゲームをやっていても思うのだが
正直ちょっとまだうざい。(笑)
確かに「のぶながのぶなが」かなり綺麗に発音していて流石プロだ。
宗左が「何をしました」と我に返るシーンが好きだった。
長谷部が「おれたちは信長にとらわれたままだ」と言う台詞も良い。
山姥切が自分が近侍になってはいけなかった、侍になって舞い上がって奢っていた、仲間を危険にさらした
と言い募るところが苦しかった。

蘭丸が加勢するところも良い。
「本当は会っちゃいけないんだけどさぁ。でも、会えて嬉しかったぜ」
と薬研がいうのもとても良かった。
個人的には風が吹けば桶屋が儲かるように何が影響するかわからないとは言いつつも
多少の変化は良いのではと思うクチなので
こういうシーンはグッとくる。

山姥切がで国広第一の傑作だ、それが俺の誇りだって思ってるという台詞も響く。
写しだと言う言葉に逃げていた。
だから駄目刀だと自分を卑下する不動が似ていると感じる。

蘭丸と戦わなければならないのは辛い。
刀ミュ阿津賀志山での義経公との戦いもそうだが
を扱う物語な以上、ひとつの見せ場ではある。
必死で錯乱しているから蘭丸が不動に斬り掛かり
長谷部は遡行軍を相手にしていて振り返ったところで
助けが間に合わず、不動を助ける為に宗左が切る
という流れも悲しくも綺麗だ。
蘭丸の「あなたたちは勤めを果たしたのでしょう」という台詞も胸に迫る。

主だから、だけではなく人として愛していたから守りたかったのにという悔しさ。
「ごめんなまんばちゃん。駄目刀は返上できそうにない」という不動の台詞も切なく、その後の長谷部の
「あなたのいうとおり僕たちは魔王に囚われたままです」という言葉も物悲しい。

ゲームの本能寺マップボスの敵部隊
織豊改変本能寺方面信長自刃阻止隊 の名前が背後に映し出される演出も
いよいよボス戦という感じで緊張する。
山姥切と三日月の共闘シーンが非常に恰好良かった。
「俺を写しと侮ると後悔するぞ!」の叫びも良い。
宗左が身を盾にして光秀を守るのも良い。

この歴史があるからこその信長と蘭丸。生きた証。
自分たちの信長があるように光秀にとっての信長がある
それはここで討たなければならない信長、というのが説得力もあった。
光秀はただ信長に必要とされたかったというのが
この物語の中での一定の史実解釈の結論を出してくれていると思う。

最後に三日月が「さて次の戦いにまいるとするか」と言うのも、良い演出。

飽く迄も舞台なので、大写しになると
オーバーリアクションに感じるところはある。
やはり芝居は生で見るのが一番なので、
次の機会には見に行きたい。

今まとめて観ているからわかることだが
当時これを観ていた人はこの段階ではまだ
一般的な意味での再演に過ぎないと思っていた方もいたしたのではなかろうか。
上手と下手を真逆にし、花は紫陽花から桔梗になり
細かい台詞の変更もある。
まさかあんな壮大な思惑が込められていたとは。
末満さんの手腕には驚かされるばかりだ。