鳥たち (集英社文庫) (日本語) 文庫 – 2017/11/17
よしもと ばなな (著)

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それぞれの母親を自殺で失った大学生のまことパン職人の嵯峨。まこは日々、喪失感に怯えては嵯峨の子を欲しがり、そんなまことを嵯峨は、見守っている。お互いにしか癒せない傷を抱えた二人。少しずつ一歩ずつ、捕らわれていた過去から解き放たれ、未来へと飛び立っていく。大人になる直前の恋と、魂の救済の物語。

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あとがきにあった、
『多分この小説は、昭和の偏屈なおばさんから
平成の偏屈なおばあさんへと移行していく過程での
私が全身で見聞きした
「日本が病んで終わっていくことに抗う表現を
細々と続ける」全ての表現者への「応援そして評論」
のようなものなんだと思っています。』
という筆者自身のこの言葉に尽きる小説。

自分はばななさんほどには多分、今の日本が
そこまで病んでいるとは思っていないのだと思う。
そして、オカルトチックな精神論に嫌悪感はないけれど
距離は保っているのだと思う。
だから登場人物たちに共感ができない。
特にまこちゃんやその周囲の女性たちの
他人との距離感が気持ち悪いとさえ思う。
いきなり妊娠だの人の生死だののデリケートな話題を
初対面だったり男性だったりの前でさくさく言うのは
自分の中ではあけすけを飛び越えて非常識で
デリカシーが無いと感じるからだ。

美紗子は頭が良い感じがするのでまだ
仲良くなれそうな気はする。
末長教授も良い人だ。
ただ、実際に自分の近くにいたらどうだろうか。
この本の中ではまだしも、という程度かもしれない。

ハードな人生を送ってきたからと言って
自分個人としては、それは人より『足りない』のであって
既に経験して自分が勝っているとは思えない。
だから、まこちゃんが同年代の友人に対して
かわいい、若い、無邪気と感じること自体が
どうも上から目線に感じてしまう。
寂しい、と留まっているように見えるまこちゃんだけれど
実は私よりも余程自分に自信がある幸せな人なのかもしれない。

寂しさが重くも淡々と綴られる中で
最後にふっと軽くなれた気がするのはほっとする。

嫌なことはできるだけさくさく終わらせて、
残りの時間でしたいことをするというのは本当にそう思う。
したいことだけをして生きていくのは
特に現代ではもう無理だと思うから、せめて
できるだけしたいことに時間を多く割くように努力するしかない。

教授が言っていた、本の命が繋がれていく感じは好きだ。
自分も本に呼ばれることがあるし、そうして
なぜだか引き合い遺すことに関われたら素晴らしいだろうと思う。

まこちゃんが言っていた、
女の人が恋しくてたまに無理してでも会う、というのは
まこちゃんと唯一共感できるところかもしれない。
正直会うとぐったりすることもあるけれど
男友達では埋められないなにかが女性と会うことで
埋まる感じはよくわかる。

魂は汚い餌で生きていると餓鬼になってもっとごみをあさりたくなる、というのも
そうだろうなと思う。
多分本人は気がついていないのだろうけれど
どんどんそっちの方へ進んでいってしまうのだ。

寂しいことがいつかただ楽しい思い出に変わる
というのはとても慰められるし
事実でもあると思う。
一言でいうなら日にち薬なのかもしれない。
人はそうして生きていくのだと思う。

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