マリアビートル 読書レビュー

マリアビートル (日本語) 単行本 – 2010/9/23
伊坂 幸太郎 (著)

元殺し屋の「木村」は、幼い息子に重傷を負わせた相手に復讐するため、東京発盛岡行きの東北新幹線“はやて”に乗り込む。狡猾な中学生「王子」。腕利きの二人組「蜜柑」&「檸檬」。ツキのない殺し屋「七尾」。彼らもそれぞれの思惑のもとに同じ新幹線に乗り込み―物騒な奴らが再びやって来た。『グラスホッパー』に続く、殺し屋たちの狂想曲。3年ぶりの書き下ろし長編。

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人が死ぬので小気味良いとまでは言い切れない
という理由から、伊坂作品の中ではそこまで好きではないグラスホッパーだったが
マリアビートル、AXと通して読んでみるとまた印象も変わってくる。

走行中の列車の中で起きる事件と言えばアガサ・クリスティの名作『オリエント急行の殺人』を連想するが
本作もオリエント急行に劣らず走行中の新幹線で事件が起き、関係者は降りる事もできず
事件が絡み合っていくという緊迫した状況に追い込まれる。

こうまで事件が頻発する新幹線には乗り合わせたくないものだが
新幹線には様々な人が様々な理由で乗っている訳で
このように一見ばらばらに見える事件がつながっていく様は
全く可能性がないことでもなく、それだけで面白い。

人の死をなんとも思わない一般社会からしたら凶悪犯ばかりであるのに
王子を除いてはそれぞれがユニークなキャラでどこか憎めない。

本作もグラスホッパーと同じく、すっきりするとか手放しで楽しいとか言える物語ではない。
気持ち悪さを感じる部分もある。
呆気にとられる展開もあったが、それでも読ませる力の強さは相変わらず。
殺し屋たちが主人公ではあるがエンターテインメント小説に仕上がっているのが不思議ですらある面白さだ。
グラスホッパーを読んでいない場合でも十分楽しめるはず。

タイトルの付け方も洒落ていて素晴らしい。