風光る (44) 読書レビュー

風光る (44) (フラワーコミックス) (日本語) コミック (紙) – 2020/2/26
渡辺 多恵子 (著)

天才剣士・沖田総司の運命は――!?
江戸に残ったセイと総司は千駄ヶ谷に転居し、病気の療養をしながらも二人だけの穏やかな暮らしが始まる。
一報、流山に進軍した近藤・土方ら新選組の面々は――!?
44巻は最終回直前話まで収録!
ついにクライマックスを迎える「風光る」。
近藤勇を愛し、土方歳三を慕い、ひとりの女子を愛した沖田総司の運命が今、動く――!!

https://amzn.to/2PH6Zym

先生がこの物語をどこで終わらせるのだろうというのは
ずっと気になっていたところだった。
もし自分なら、ここまで土方さんも新選組自体も魅力的に描いておいて
箱館に行かないということはないだろうと思っていた。
沖田さんが遺髪を届けてくれとフラグを立ててはいるし
やはりセイちゃんは五稜郭まで行くつもりなのだろうと思っていた。
自分は単行本派なのだが、どうも次で最終話らしく、そうはならないということなのだろうか。

新選組関連のフィクションは多々あるが、
風光るだけは本当に、史実との違いについて違和感が無い。
資料を調べ尽くして描いているのがひしひしと伝わる。
物語が終わるのは寂しい反面、終わったら公開すると仰っていた
先生の参考文献が知れるのは楽しみではある。

史実の中へのフィクションの落とし込み具合が巧妙で、
セイが女装をするのも、世話をしていた女性がいたという話と
矛盾がない。
黒猫はよくエピソードとして登場するが、
本来日本では黒猫は縁起物であり、まして江戸時代には
飼えば結核が治ると言われていたものであり
この点でも福として登場させていてくれて嬉しい。
沖田さんが切ろうとして力尽きたという説を採用しないでくれて
個人的に非常に嬉しかった。

遂に夫婦の仲になるという、少女漫画としてのバランスも良いと思う。
史実の沖田さんも、無念さに苛まれ失意の中この世を去ったというより
こうして最後に穏やかな日々を過ごせたと思いたい。

流山の件はやはり見ていてしんどいが、
近藤先生はもちろん有馬さんの描き方も安心できるもので、
土方さんと近藤さんの会話も自分の思う史実に非常に近い。
近藤さんは加納との面通しで”恐怖に顔を引きつらせていた”という
証言もあるが、
大河ドラマ新選組!では近藤さんから久し振りと声をかけており、
この演出が非常に評価されていたことは記憶に新しい。
風光るでも後者の演出を取ってくれているが
ここまで描いてきた男・近藤勇を思えば、事ここに至って
加納に近藤勇だと証言されて
バレたら殺される!と真っ青になるようなことはありえないだろう。

横倉喜三次にスポットを当てているところも流石だと思う。
嘆願の為江戸を駆け回っていた土方さんが、勝から交換条件を出された
としているところや、
沖田さんのところに顔を出せたことになっているところも良い。
宇都宮での負傷があっさり済んでしまったのは残念だが
尺も限られているし、あくまでメインはセイと沖田さんだから仕方なしか。

土方さんの苦悩も次の話で描いてくれるならとても嬉しいとは思う。