吹上奇譚 第二話 どんぶり 読書レビュー

吹上奇譚 第二話 どんぶり (日本語) 単行本 – 2019/1/24
吉本 ばなな (著)

「吹上奇譚」の続編です。
個人的には前作の方が好みでした。
書かれていること自体はとても好きなのですが
書き方に少しひっかかりを感じるところがいくつかありました。

飲食店は素晴らしい反面、三大欲にかかわるから因果な商売というのは
そういう考え方をしたことがなかったのですが
だから飲食店は素敵だけれど大変なのかなと思わされました。

仮面ライダーカブトは自分はよく知らないし
そういう俗世の名称がさっと出てくるのがやや違和感があったかもしれません。

お母さんに食事を出すときに使った入れ物が、
新婚旅行で長野で買って大切にしていた蓋付きの小さな
かわいい塗りの器で、おひなさまにあげる食事みたいにかわいかったというのが
とても丁寧で温かい気持ちになる描写でした。

確かに、人ってなにで眼が覚めるのか読めないです。
他の人はなんとも思わなくても自分の琴線にふれるというのはよくあることだと思い舞ます。
未来のことはそのときの自分に託して、逃げるのではなくて
その日までにきちんとした判断ができる自分になれるようにするのが今できること
という考え方は素敵だなと思いました。

美鈴が乗っ取られていることに気がついて、墓守くんに連絡する
とかではなくて取り敢えず放っておこうという判断にはびっくりです。
とても自分にはできないです。
墓守くんに、君という仲間がいるからと言われるのはちょっと誇らしい気がします。
除霊の仕事とは武士道のようなものという描写はちょっとひっかかりました。
途中で中身が違うとわかったのに、姿や体が好きだからやめられなかったという墓守くんには正直言って幻滅です。

つきあっていた人が死んだから花を作ってくれる? と信頼して頼める人がいるのは
やっぱりちょっとうらやましいなと思います。