なんの予備知識もなく見た。
どうしようもなく心が抉られる作品。
賛否両論で評価が割れてしまう理由もよくわかる。

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元は舞台とのことで、確かに舞台映えするストーリーで、
演劇界では問題作として普通に受け入れられる作品だったかもしれない。

兎に角まず、俳優陣の演技力の凄まじさに圧倒されてしまう。

正直共感出来る登場人物というのはいなくて
際立っているのは山田孝之さん演じる木島宏のどうしようもなさだ。
ただ、堺雅人さん演じる中村健一も今ひとつ、一言で言うなら病んでいる訳で。
新井浩文さんが演じる健一の義兄青木順一にしろ、綾野剛さんが演じる小林英明にしろ、どうしてそれぞれ健一と木島にそこまでしてやるのか
自分にはどうにも解せなかった。
人間、必ずしも行動に理由があるわけではなく、理由はないけどどうしてもこうしなければならなかった、ということもあるわけだが。

本当に演技力が素晴らしく、先が読めない。
健一が何をしたいのか、何をしようと思っているのか
最後まで読めないし、多分自分でもわかっていないのだろうと思う。
インタビューで、堺さんとしては希望を、監督としては何も解決していないことを描写したというのを読んだが
本当にどうという答えが無いラストなので、そういったものが苦手な人には不向きな映画だろう。

私は、復讐できないのを悔やんでいるようにも、自暴自棄になっているようにも見えた。そしてまた、川村などと多少なりとも距離を詰める未来もありえないことではないのではないかとも思った。

健一のキャッチボールの後、思わず高橋努さん演じる久保浩平が涙するシーンは
地味ながらもぐっときた。
なんだかわからないけどふと涙が流れて、思わず感情移入したりほっとしたり
いろんな複雑な思いに囚われることが、時にはあるはずだ。
とてもリアルな涙だったと思う。

谷村美月さん演じる関由美子は非常に不思議なキャラ。
何故木島に惹かれたのか。何か鬱屈したものが彼女の中にもあったのか。
狭いアパートの部屋にソファを買いたい、雨が好きという彼女にも
仄暗い怖さと切なさを感じる。

小林は何故木島とつるむのか。久子をひいてしまったときにも
ずっと震えながら救急車を、と言っていたし
星や青木に対しても常識がある風の態度を取る。
木島が怖いとも言う。木島の暴行行為を止めようとしつつも
言うばかりで行動にまでは移せず震えている。
それなのに、木島には自分がいないと駄目なのだとも言う。
そんな彼が、木島と星が立ち去った後青木に対してどうするか読めなかった。
助けるのか埋めるのか、どっちでもありえると思った。

結局助けてくれた小林に対して、冷静に丁寧にいつも通り振る舞うかと思えば
突然怒りをぶちまけ、言うつもりではなかったと謝るのに
また小林にあたるという矛盾やギャップもまた人間らしい。

やりたい放題で怖いもの知らずに見える木島ですら
健一に復讐されると思い多少なりとも脅え
待つことを嫌い包丁を隠し持ったまま大声で呼ばわり迎え討とうとする。

人間のあやふやさ、惰性でも生きていけること、煮え切らなさ、孤独
様々なことが空恐ろしく感じる映画でもあった。
一歩間違えば誰でも、この登場人物の誰かになりかねない。

健一と木島のあの夜の対峙シーンを、監督は決闘と呼んでいた。
だからこのタイトルなのかもしれない。
あの瞬間は、2人とも本音でぶつかっていたのかもしれない。
2人とも自堕落な生活をし、煙草やプリンなど体に悪いものも手放せず
周りに迷惑をかけつつ助けられて生きているという共通点が図らずもあるのだ。

映画の宣伝で、堺さんが「見ると気分が悪くなるから見ない方が良い」と言っていたというのを見かけた。
公開当時この映画のことを知らず、番組も自分で見たわけではないので
堺さんがどういう思いや意味でおっしゃっていたのか自分にはよくわからない。

確かに気分が良くなる映画ではない。

自分の妻を過失であっても殺して、全く反省の色がない男に
「他愛のない話がしたい」「おまえは何の関係もない」
「おまえは本当にただ何となく生きている」
と言う健一。
もしかしたら微かにでも、この言葉は木島の心を打ったのかもしれない。
そしてまた、健一に返る諸刃の剣でもあったのかもしれない。

2016.5.18

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