【読了】ライトニング (文春文庫)

好きな作家さんがお薦めしていたので読んでみた。
1989年に出版されている話で、今読んでも古さを感じず面白い。
以下ネタバレあり。

SFでタイム・トラベルものとなるとどうしても似かよってしまうものなのかもしれないが
かなり早い段階で自分は梶尾真治氏の新編クロノス・ジョウンターの伝説

を連想した。

そこまでする、その理由が一方的な片思いであること。
未来からではなく過去から来たというのは多少目新しいが
タイム・パラドックスなどの説明として、一度行った時間には行けない、
運命が歪められた部分を元に戻そうとしてくる、などの制約事項なども似通っている。
しっかりした計算が必要なトラベルなのに、5秒間という間を指定して飛ぶことはパソコンを持ってしても不可能、など
納得しがたい記述も多く感じた。

また、心を痛めているという記述はあるものの、自分の正義の為には
躊躇いなく毒ガスでも機関銃でも使用してあっさり敵を殺害してしまうところと
実在の人物の名前なども出てくるのでちょっと驚いてしまった。

世界と言い出すと大抵ヒーローはアメリカ、の法則からも逸脱しており
その点も目新しいかもしれないが
未来の武器を使い、自宅で訓練を行ったとしても
ローラ一人で部隊相手に割と簡単に勝ってしまっているし
ローラよりは腕に自信があるとしても、シュテファンも同じく複数の相手にも負けない立ちまわりを演じる。

面白いしあっという間に読めるのだが
現代の視点から見るせいか理論は多少物足りないし
クロノスの吹原の情熱がただのストーカーに近く
全く共感出来ない
(キャラメルボックスで上演された吹原はこの点が解消されていた)
のと同じようにシュテファンの情熱にいまいち感情移入出来ないのは
女性の目から見ているせいもあるのかもしれない。

2014.11.26