ブルー・ボトル・コーヒーが日本上陸、などのニュースが出ていた頃この本のタイトルと触りを読み、興味があって今般手に取りました。
川島さんのお名前をよく知らず、西洋至上主義を批判するような内容なのかなと思っていましたが
コーヒーに対する愛情、現在の日本のコーヒー業界への疑念など
兎に角コーヒーへの愛情に溢れた本でした。
今までコーヒーに興味がなかったこともあり、
日本は世界第4位の消費量を誇るコーヒー大国だということを知りませんでした。

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ミカフェートは知っていたので、プロフィールを見てなるほどと思いましたが、この本を読んで川島さんというのは
本当に凄まじい人だなと感服しました。

自分はコーヒーより紅茶派で、その理由は正に
飲めないほどまずいコーヒーはあるけれど飲めないほどまずい紅茶は無いから。
普段は勿論、お店に行ってもコーヒーを頼むことはありませんでした。
苦くて渋いもの、酸っぱいもの、砂糖やミルクを入れないと味がしないもの、まずいもの、そうしたイメージだったからです。

おわりに に書いてあった通り、この本のお蔭でコーヒーについて知ることができましたし、
自分は恐らく本当においしいコーヒーを飲んだことがないし、
是非とも飲んでみたいと思いました。

コーヒーの抽出の仕方をYoutubeを見て覚えたとか
売れさえすればいいから抽出器具のメーカーも正しいやり方を教えない
というエピソードは驚きでした。
商習慣で、豆の契約をしてくれたら器具を無料貸出というのが普通になっていて、納入される豆は会社任せというのも驚きでしたが
そんな状況ではこれまでコーヒー豆にこだわろうというお店が出てこなかったのも納得です。

抽出後20分以内でないと美味しくないという話は、
確かに以前某ドーナツ屋さんでバイトしていたとき、コーヒーは抽出して30分保温したら全て捨てて新しく入れ直していたことを思い出しました。

コーヒーはフルーツであるという感覚、確かに今までありませんでした。そう聞けば、鮮度や輸送、保管、パッキングの方法など全てが大切になってくること、容易に理解できました。
コーヒーといえば麻袋というイメージ、確かに持っていましたが、まさか軽くて安いから、というだけの理由とは。

焙煎は料理というのもなるほどと思いました。料理の技ももちろん大切ですが、普通なら素材も吟味するでしょう。

コーヒーの価格が飲食店の格で設定されていて、本当の意味では適性価格ではないのに
それが普通になってしまっているコーヒー業界にも消費者にも問題があったのだと思います。
ホテルやレストランで食後のコーヒーにがっかりしたこと、
確かにあるのですが、そんなものだと思っていましたし、
だから自分はコーヒーは好きではないのだと思ってもいました。
酸味と酸化は違うという言葉に、多分自分はそれを混同していただろうと思います。

欠点豆を取り除くだけで変わるというのは、以前別の本でも読んだことがあります。
知識がないと、袋で買ってきたらそのまま使えるものだと思いがちです。
安い豆を買ってまずいまま飲むか、たくさんの欠点豆を取り除くかと、高いけれど欠点豆が入っていない豆を買って飲むかでは
多分後者の方がいろんな意味でお得なのだと思います。

何品種も同じ畑で育てていては交雑してしまうし、
土地に合わない品種を無理に育てても良いものは育ちません。
知識がなくて「これが◯◯種の苗」と嘘をつかれても信じてしまうというのは
嘘をつく方がもちろん悪いのですが、知識が無いということの問題を感じます。

プロジェクトの話で、
おいしくないコーヒーを可哀想だから買ってあげるというのではなく
本当に美味しいコーヒーを育ててもらうというスタンス、とても尊敬できます。
MUJIcafeが賛同してその豆を使うというのも流石です。

流石と言えば、フレンチの料理長やジャンポールエヴァンが川島さんのコーヒーを認めるというのもすごいエピソード。
やはり本物の味が分かる人には分かるということなのでしょう。

ホテルニューオータニのグランシェフ、パティシエの中島さんが
自分が作ったスイーツを6種持ってきて、一緒に食べてから
合うコーヒーについて話し合うというのも素敵なエピソードでした。

JALのコーヒー開発のエピソードには感動しました。
みんなが本気で向き合ったからこそ、本物は完成するのですね。

それにしても、川島さんのやり方は他の業者のように
無償で機械を提供しないのは良いとしても
こうしてそれぞれのクライアントの為に開発やトレーニングまで
行ってしまうというのが凄いです。

品質の高いコーヒーだから売れると思うなよとコーヒー関係者に言われたとのことですが、
この本の中でもご本人が仰っているとおり
高いコーヒーを売ればいいというのではなくて、
包装の方法や輸送方法などケースバイケースで柔軟に対応し
案件に対してベストな方法、商品をプロデュースしているという
誠実さが実際に認められてきたのだと思います。

本来の美味しさを発揮できない環境、輸送方法、管理方法下の豆を
いくら焙煎や淹れ方に拘って淹れたところで
本来の美味しさにはならないでしょう。
これは根深い問題で、
消費者は「高いのに美味しくない」と思い豆の評価が下がり、
「高くてもおいしくないなら、安いもので十分だ」となって
業界全体の質が低下していくことになるのですが、
その深刻さを業界や消費者が把握していなかったように思います。

川島さんのやり方を最初に認めてくれたのはワイン愛好家、
次がシガー愛好家というのはなんだか面白いです。
逆に言えば、今まではそうした違いがわかる、こだわりがある
コーヒー愛好家が少なかったということなのでしょう。

ボトル詰めコーヒーについて、採算が取れなければ普通はやめてしまうものを、
川島さんは実現したというのがすごいです。

コストがかかるのも詰めにくいのも売る側の都合
そんなことでやめていたらコーヒーの価値を上げることはできない
というコメントも、川島さんの情熱がうかがい知れます。

生産者は自分たちの作った豆がどんなコーヒーになるのか知らない、
飲んだことがないというのは、意外なようでよく考えれば当たり前のことでしょう。
生産者に川島さんが作ったコーヒーを持参するという気遣い、なかなかできることではない気がします。

日本流を押し付けるのはもってのほか、他の産地と同じことをやってもだめ
その土地に古くから伝わってきたやり方や流儀を、尊重しつつ新しい技術を受け入れてもらう
やって見せて納得してもらう、
そうした地道で誠実な努力が実を結ぶのは、傍から見ていても気持ち良いことです。

コーヒーのピラミッドという言葉にあるように
ワインのように様々な場面でそれに見合ったコーヒーを選ぶというのは
多分ハレとケを意識してきた日本人としては本来一番しっくり来る
コーヒーの飲み方だと思います。
スペシャルティだけがコーヒーではないのだと、コーヒーの専門家が言うことに意味があると思いました。

今のコーヒー業界では、「こだわりのコーヒー」と謳っていても
そのこだわり時代が間違いだったり思い込みだったりすることもままあるのでしょう。

スタバやコンビニコーヒーを馬鹿にするのではなく
それぞれの良さを認めつつ、それとは別にハレの日のちょっと良いコーヒーを飲もうと思った時
それができる場所を提供してくださるというのは
実はとてもすごいことあり、ありがたいことです。

今まで価格しかコーヒーのものさしがなかったところに、
セブンカフェというものが新たなものさしとして登場しました。
消費者が美味しいコーヒーを意識し、様々なものさしを持つことで
コーヒーの世界がより活発になれば良いなと思いました。

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