進撃の巨人(1) の感想 構成と設定の凄さ

進撃の巨人(1) (少年マガジンKC)
諫山創

アニメを先に見て衝撃を受けて読んだ漫画だ。
本来怖いものは苦手なのだが、ぎりぎり見られるはずと周囲に言われて
すっかりはまってしまった。
設定と構成が素晴らしい。引き込まれる作りになっていて
1話1話に序破急があり目が離せないのだ。

以下ネタバレあり。



アニメではアルミンのナレーションになっていた
「その日人類は思い出した」という冒頭の印象的なフレーズをはじめ、
耳に残る台詞もとても多い。
「なんの成果も!! 得られませんでした!!」のシーンも
非常に流行ったし、色々な人がネタとして使っていたイメージがある。

人食い巨人が入ってきて子供たちの目の前で母親が食われる。
それだけでも酷い状況なのに、食われ方がまた容赦なく無慈悲だ。
言い換えるならリアルなのだ。
ハンネスさんが颯爽と助けるのではなくエレンとミカサを抱えて逃げ、
母さんを助けられなかったのはお前に力がなかったから
巨人に立ち向かわなかったのはオレに勇気がなかったから
とエレンに言うところも凄まじい。
大人たちが泣き逃げ惑うしかできない生存本能を脅かす恐怖。
それがこの世界の巨人なのだ。
エレンの「駆逐してやる」もまた名台詞。

そして行方不明の父親についてエレンの記憶に残っているのは
やめてくれと泣き叫ぶ自分になにかの薬剤を打つシーンという不穏なもの。

成長したエレンが希望を持って振り返ったそこに突如現れる巨人という
見開きページにもまた驚かされる。

エレンたちが学ぶという形で明かされる巨人の習性。
捕食が目的ではないという設定がまた気色悪い。
再生能力があるが弱点も一応あるのだが、
うなじを縦1m幅10cm削ぐという変わったものだ。

主人公のエレンが成績トップというわけでもなく
しかしながら彼の言葉に心を動かされるものがいる。
そんなエレンが巨人にやられてしまう、
しかも足を食いちぎられるというのも容赦の無い描写だ。
更にアルミンを助けようとして、助けられるものの
自分が飲み込まれてしまうのだが、その際腕まで千切られてしまう。

リアルな戦いの酷さを表現するだけでなく、
手足をもがれることにもきちんと意味があったことが
後々分かっていくことがまた凄い構成なのである。