進撃の巨人(3) (講談社コミックス)
諫山創
リヴァイが殉職しようという部下に
「お前は十分に活躍した そしてこれからもだ
お前の残した意志が俺に”力”を与える
約束しよう 俺は必ず!! 巨人を絶滅させる!!」
という台詞は痺れる。
単純に良い上官だし、
エレンと同じように巨人から世界を奪い返す意志があるのだ。
ウォール・マリア陥落後調査兵団がしていることは、
大部隊を送る為の下準備という設定もリアルに練られている。
巨人化したエレンを変わらずエレンと認識しているのは
アルミンとミカサだけ。
辛いがこれもリアルな描写だ。混乱する方が大多数だろう。
自分が持っている鍵は地下室の鍵であり
そこへ行かなければいかないということを思い出すエレン。
エレン本人すら現状を把握しきれない状況で、
エレンが自分たちを守ったことだけ今は理解できればいい
というミカサの言葉はすっきりしていて良。
2巻でも少しミカサが言っていたが、
エレンとミカサがアルミンを信頼していることがはっきり言葉にされた。
どの行動が正解か当てられる。
自分のことを無力で足手まといと思っていたのは自分だけで
エレンとミカサは自分を信じてくれていたというのは胸が熱くなる。
駄目だと思った後も
「人類の栄光を願い!! これから死に行くせめてもの間に!!
彼の戦術価値を説きます!!」
と叫ぶアルミンの気迫は凄い。
ピクシス司令の登場、そして
彼が「現状を正しく認識してる」と言うエレン。
敵は巨人だけじゃない。
人類は人間同士で争っていて、強大な敵が現れたら
一丸となると言われていたが、そんな訳はない。
司令はエレンを皆の前で、
極秘裏に研究してきた巨人化生体実験の成功者だと言い切る。
しかしそうでもしないと、恐怖と絶望に総崩れしかねない。
一度巨人の恐怖に屈した者は二度と立ち向かえないから去っていい、
その恐ろしさを自分の親兄弟、愛する者に味わわせたいなら去っていい。
厳しい言葉だが、真実だ。
家族を守りたい、そして家族より自分の方が少しでも
巨人に対抗する力を持っているなら、恐怖を抱いても屈してはいられない。
震える足を止めるのではなくただ事実を思い知らされる台詞である。
人類が滅ぶなら巨人に食い尽くされるのではなく
人間同士の殺し合いで滅ぶ。
ウォール・シーナの中だけでは残された人類の半分も養えないから。
これより奥ではなくここで死んでくれ。
徒に嘘を並べて気分を高揚させようとするわけでもなく
予想される未来を述べる。これが、説得力がある。
それは人類が奪われてきたモノに比べれば小さなモノかもしれん
しかしその一歩は我々人類にとっての
大きな進撃になる
という、ここでタイトルの進撃の言葉が含まれていることも熱い展開だった。
奪われた物を取り返す。それはほんの少しだとしても
奪われるなかりだった人類にとっては
今まで成し得たことがない大きな一歩になるのだ。
ここまで高めておいて、この流れで巨人になったエレンが
思い通りに動けず、ミカサは攻撃されアルミンが必死に呼びかけるが
家にいて夢見心地でソファにいる夢を見ている。
もどかしく相変わらずハラハラする展開だ。