進撃の巨人(13) ネタバレあり感想

進撃の巨人(13) (講談社コミックス)
諫山創

戦の後の心理状態の描写もリアルだ。
エルヴィンが意識もなく重傷というのもショックである。
みんながボロボロになって、心と体に傷を負っている。
自分が攫われたから大半が死んだ。
最中に微かに見える希望、エレンが巨人を操ったかもしれない
という事実。
「お前を取り戻す為に死んだ人たちを活かすか殺すかは
お前次第」。ジャンは本当に成長したと思う。

図らずも今回で、一週間しか壁内の”最後の平和”はもたないことが
証明されてしまった形になった。
エルヴィンが部下を何百人と巨人に食わせてきたのだから
腕一本では足りないというのが気丈であるが
きつい台詞でもある。

判明する巨人の弱点の理由。
リヴァイの「俺が今まで殺していたのは人だった」という言葉も
なかなか辛いものがある。
確証は無いとは言え、胸糞の悪い仮説なのだ。

図らずもまた同期と行動を取れることになったエレン。
巨人の力で壁を塞げるなら、命懸けで大人数で
資材を運びながら進む必要がなくなる。
一日でウォール・マリアが奪還できる。
かなり凄いことだ。現実味がない。
比較的前向きで意欲的なハンジが弱気になるのも
きついものがあった。
ニックが憲兵団に拷問を受けて殺された。
中央の連中の考えもまた読めず、恐怖を感じる。
必死に動いていた壁の外をにらんでいる間に
背後から刺されて致命傷。正にそうなりかねない。
だからこそ、時間が経つほど追い詰められると言う
リヴァイの意見は正しいだろう。

クリスタの過去も壮絶だ。
開拓地に2年いて訓練兵になったというが
そんな過去を持つ割にはそれでも曲がってなさすぎるというか
本当に良い子なのだろうなと思わされる。

クリスタが、エレンはとても辛いだろうけど
やりたいことがいつもはっきりしていると言う。
エレンが何もしなきゃみんな食われておしまいなんだ
悩んでる余裕がないんだよ、というのも真実をついている。
クリスタ、もといヒストリアは、
クリスタ・レンズみたいな良い子はもういないと言うが
エレンは、前は不自然だった、今のお前は何かいい
別にお前は普通だと言ってくれるのが、飾らない
大した良い言葉でもないのが余計に伝わる感じがする。

リーブス商会は、物語の始めで荷馬車で塞いで
避難を遅らせていたのが会長だったとは。
まさか交渉成立するとは小気味好い展開だった。

確かに、このままわけのわからぬまま人類滅亡の日を迎えるわけにはいかない。
我々がこの壁に残された人類全ての実権を握るのだと説くエルヴィン。
こうした政治的な展開も織り込まれるとは予想していなかった。
リアルな問題描写だと思う。興味深い。