そのうちなんとかなるだろう 単行本(ソフトカバー) – 2019/7/11
内田樹 (著)

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やりたいことは諦めない。やりたくないことは我慢しない。たどり着く場所は、結局同じだから。直感に従って生きてきた思想家の悔いなき半生記。

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筆者の半生を綴ったエッセイ。
ウエブ マガジンのロング・インタビューを元に構成してあるそうだ。

学生運動について、時々モノクロ写真で見たり
フィクションのスパイスとして出てきたりして知っている程度だったので
当時の肌感覚で書かれているのが興味深かった。

師弟関係について、
弟子を伸ばすために言うことと潰すために言うことは表面上似ていて
識別が難しいという件もとても興味深い。

武道家は勝敗や強弱を競う境位を離脱し、
いるべき時に、いるべきところにいて、なすべきことをなす人間になることが修行の目標であり、
道場は楽屋、一歩外に出たところが本番の舞台というのは
共感するところだった。
実践するのはなかなか難しいが。

「侍は用事のない所に行かない」。
いなくてもいいときにいなくてもいいところにいればトラブルが起きるからというのは
確かにそのとおりではあるのだが
侍でも旅好きな人はいたわけで人それぞれではあるのだろう。

稽古に無理してこなくて良いというのはちょっと意外に感じた。
一般的には、怠けた精神を叩き直すと言いそうなのが武道のイメージではないだろうか。
ただ、自分も剣術道場に通っていたが師匠はとても優しく
仕事で全く稽古に来られない場合でも
「今の世の中仕事があるだけありがたいから」とニコニコしておられた。

体が行きたくないとアラームを出しているのにそれを切って出かければ
アラームを切ってるからセンサーも働かないので
思いがけない災厄に巻き込まれる。
自分も普段自分の直感や本能のようなものを大事にしようと心がけているが、
やはり現代社会で生きるにはそればかりでやってもいけない。
もちろん本文にあるとおり、それで体を壊しても誰も責任をとってくれないので、
自分でバランスをとってうまくやっていくしかない。

決断をくださなければならない状況は、
今悩むべき問題ではなく今までしてきたことの答え というのは
厳しくも成程と思った。確かにその通りだ。
今悩むことではない、悩んでも遅いことであり
大抵の場合どんな問題でも決断して前に進むしかない。

丸暗記ではなくフランス語話者から世界はどう見えているかを教える
というのは、生徒さんが羨ましいなと思った。
言語教育だけに限らず、理由を教えずに
「いいから俺の言うとおりにしろ」という上の人間というのは多いもので、
そうなると言われたことを言われたとおりにしかできず応用も聞かないし
なんの面白みもなくなるのだ。
日本の学校は勉強を強制することで英語嫌いを作り出している。
本当にそうだと思う。

人間を疲れさせるのは労働そのものではなく、
労働システムの設計や管理、合理化というのも、本質としては近いのだと思う。
つまらないことはやりたくない。
楽しくないのに無理にやれば効率も悪くなる。

そして批判することは何も産まない。
才能あるひとの魅力はある種の無防備さと不可分であり、
批判されて警戒心が高まり欠点は補正されても魅力が高まることはないし、一度傷つけられると無防備さは回復しない。
人に才能を発揮して欲しいなら過去の業績に評価を下すよりこれから創り出すかも知れない傑作に期待するべき。
人を育てる立場にある人は、こうした考えでいて欲しい。

離婚なさったときに義理のお父様が、
娘は勘当した、君とこれからも親子の付き合いを続けていきたいと
連絡をくれるというのはなかなかあることではないだろう。
初めの心証は悪かったようなのに、そこまでの信頼関係を築けるというのはすごい。

人間が同じである以上右左どちらにいくか悩んでも
行きつくところはそれほど変わらない。
悩んでいるときは一大事だと思っているが、結局は道筋が変わるだけで
行き着くところは似たようなものなのかもしれない。

SNSは匿名という話は度々論争が見られるが
これは一概には言えないと自分は思っている。
匿名性があるから誹謗中傷が多い、本名で使えばいいと言うが
自分の場合はFacebookの方が酷いことを言っている人が多いし
Twitterでも名前にしている人は所謂”意識高い系”で頓珍漢なことも多い。
本名じゃないから駄目というより、自分の発言に責任を持つかどうかである。

話をシンプルにしろ、良いか悪いかどっちだ なんて人が多いが
子供の言い分であり、
複雑なものは複雑なまま扱うのが大人の作法 というのは
面白い言い方だなと思った。
複雑なまま取り扱って「なんとかする」。
できるようになったわけではない、そういう技術があると知ったから、
死ぬまでに若者の時代を少しでもよくするよう努力する。
この考え方もとてもよくわかる。
としをとってくると、遺すということを考えるようになるものなのだろう。

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