イデアの影 読書レビュー

イデアの影 (日本語) 単行本 – 2015/11/21
森 博嗣 (著)

谷崎潤一郎没後50年・生誕130年の谷崎潤一郎メモリアルイヤーに
中央公論新社から出版された小説。
谷崎潤一郎の「細雪」が扉に引用され、オマージュとなっている。

ミステリーというよりかなり文学的。
不思議な雰囲気を纏った物語だ。
装丁も合っていて、真っ白な本に透明なカバーという
とても美しいものになっている。

イデアの影と言えばプラトンの洞窟の比喩。
段々と夢と現の境がわからなくなっていき、
そもそも何が現実だったのかもわからず、
ふと気がつくと底しれぬ恐ろしさを感じる。

「命を少しずつ丁寧に神様にお返しする」
「死の理由は生なのだ」
という言葉が良かった。