【読了】すべてがFになる (講談社文庫)

著者の作品を読むのはこれが初めてだ。他のシリーズはまだ読んでいないので、これを機会に読んでみたいと思う。
ドラマ化を知って興味を覚えて読んでみた。
キャスティングだけ知ってから本を読み始めたのだが、常識はずれだが憎めないお嬢様と、集中力が高く理知的な助教授に、武井咲さんも綾野剛さんもとても合っていると思った。
ただ、ドラマはシリーズから抜粋だそうで、この話をじっくりドラマ化してくれたわけではないことはちょっと残念だった。

真賀田四季の遺体の登場は非常にショッキングであるものの
地の文も犀川創平も非常に理論的であり、淡々と読み進めることが出来た。
ただだからこそ、感情移入がしづらい部分はあった。感情的な描写については、全般的に非常に少ない。
謎解きを楽しむというよりは、理数的な描写を読み進めるという楽しみだった。
トリックは然程奇抜ではないと思う。
個人的には、特に犀川の言う言葉のレトリックが興味深かった。

犀川も西之園も一般人とは違う感覚の持ち主なのだが
特に犀川の考え方には自分と近いものを感じ、共感する部分が多かった。
自分も、無駄なものを廃した真賀田研究所は理想の職場だと思う。

『自然を見て美しいなと思うこと自体が、不自然なんだよね。汚れた生活をしている証拠だ。』
『ペンチが発明されたとき、ペンチなんて使うのは人間的じゃないって強情を張った奴がいただろうね。そんな道具を使うのは堕落した証拠だって。火を使い始めたときだって、それを否定したし種族がいただろう。けれど、我々は、そもそも道具を使う生物なんだ。戻ることはできない。こういうことに対して、寂しいとか、虚しい、なんて言葉を使って非難する連中こそ、人間性を見失っている』
などにはとても頷かされたし、
『覚醒は本能的に不快なもの』というのは、最近死について考えることがあるので
中々に衝撃だった。

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2015.3.12