ゼロワン (文芸書) 単行本 – 2015/12/8

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若木 未生 (著)

王串ミドロ、三十三歳。無名のお笑い芸人。だが年末のマンザイ・グランプリで優勝すれば、どんなに無名でもキャリアがなくても、一夜にしてスターになれる! こうして漫才コンビ、“ゼロワン”は、マングラの頂点を目指し、悩みながらも奮闘を開始。頼りなくも熱心な若き相方零、圧倒的な実力を誇るライバル“クロエ”、自由奔放な恋人マドカらの存在を糧に、芸人・王串は自分の笑いを形づくろうとする。笑って泣けて元気の出る、青春小説の傑作!

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久し振りに先生の、シリーズの続刊待ちではなくて
新刊かつ読み切りの話を読んだ。
とても新鮮で、しかし若木節がしっかりと生きていて小気味良く
あっという間に読んでしまった。

比較している方がちらほらいらっしゃったようだが
自分もグラスハートを思い出しながら読んだ。

主人公が三十路というのが魅力のひとつかと思う。
夢を追いかけることに疑問を感じ
周囲の目も冷たい中で感じる自分への不甲斐なさ。

グラハーのテンブランクにオーヴァークロームがいたように、
ゼロワンではクロエがいる。
このクロエが自分としては非常に魅力的なライバルとして感じられた。

相変わらず、ぽつぽつとぐさりとくる描写があり、心がやられてしまう。
『考えたら答えに行き着いてしまうから
よく考えては駄目。楽しいことばっかりやろう』

“さみしかったから、断れなかった。
ひとりぼっちになって行き場がなかったから、零を巻きこんだ。”

最近やる気だねと言われた時に
穿った捉え方なのだが、
最近の自分を肯定されたと思えずに、
以前の自分を責められたように思ってしまう、

“どうして俺たちは、日の当たる大通りを安全に歩かないのかな”

などが特に心に残った描写だった。

これは分類としてはラノベでは無いようだ。
若木先生の他作品を知っているので大丈夫だが
普通の文学本として手にとった人の中では
文体やおたくネタに違和感がある人もいたのではと思う。

それから、芸人を目指す話だと自分は
森田まさのり先生の『べしゃり暮らし』が大好きで
これのすごいところは人間ドラマなど展開だけでなく
たくさん出てくる芸人さんのどれもがきっちり面白いまたはきっちりつまらないところだった。
面白いネタとして描かれているネタは読みながら声を出して笑ってしまうほどで
本当にこういうネタで一気に売れる芸人がいそうだと思わされ
非常に説得力があった。
森田先生も西側の人だし、身に沁みついたものがあるのかもしれない。

残念ながらゼロワンのネタは、自分の好みからするとそこまでの説得力はないものが多かった。
若木先生らしい小難しくべらべら喋る感じのキャラで、ファンとしてはにやっとしてしまうところだが
芸人のネタだとちょっとどうかなと思うセリフに対して
会場大爆笑、みたいな描写があるとちょっとあれっと思ってしまう。
少なくとも、東京のお笑いだなと感じたので
その辺りは少し残念だった気もする。

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