【読了】その女アレックス (文春文庫)

非常に重い話で三部構成と長めではあるものの、ストーリー展開が目まぐるしくさっくり読める。

女性が男性に拉致されるという衝撃的な始まり、
彼女の絶望的な状況と
犯人を置い女性を助けようとする警察の状況が代わる代わる語られるのが第一部。
読み手の予想を裏切る展開が続く。

以下ネタバレあり。

最後まで読み終えてから振り返ってみると
それなりの矛盾点というのは色々と出てくる。
第一部で言えば、
アレックスには恨まれる心当たりはあっただろう点、
誘拐犯に反撃しない点などである。
第一部ではアレックスは無実の被害者でなければならないので
演出上仕方ないことではあるのだが。

フランスの警察官の必要資格に疑問を呈している方も見かけたが
確かにその辺りも事実とは整合性が取れないかもしれない。

誘拐事件解決がゴールかと思いきや裏切られる第一部、
アレックスが純粋な被害者ではないのではないかと思わされる第二部、
そしてアレックスの過去が明かされる第三部
と展開が面白いが、反面伏線が緻密に散りばめられ
ラストが予測出来るようになっているかといればそういうタイプの小説ではないと思う。
どちらかと言うと先程矛盾としてあげたように、
最後の展開を隠す為に事実が意図的に隠された描写なので、騙されたとか肩透かしだとか感じる方もおられるかと思う。

この辺りで評価はわかれるのでは。

自分としては、細部にこだわらないエンタテインメントとして面白く読めた。
ミステリというよりはサスペンスに近いが
そういったものが好きで陰惨な描写も大丈夫な方にはお薦め出来ると思う。

2016.3.17